塩害(えんがい)は、土地や植物、建築物などへの、塩分に起因する害の総称ですが、ここでは、土地の塩害問題についてまとめています。
土地の塩害は、農作物が作れなくなるだけでなく、きちんと対処しないと最終的には砂漠化してしまう可能性もあり、深刻な問題となっています。
塩害が起こる要因は大きく分けて2つ
塩害の要因は、「海に近いから」「海からの塩を含んだ風」という、海水からの影響を受けて発生すると思われている方が多いかと思います。
もちろん海水も要因ですが、近年では農業という人為的な要因によって発生する塩害の事例も多くなっています。
まず、塩害の要因を「自然的要因」と「人為的要因」の2つに分類してみましょう。
自然的要因による塩害
自然現象による塩害は、潮風と呼ばれる海から吹き付ける塩分濃度の高い風によるものや、台風や強風などによる高波で海沿いの農地に海水が飛散・侵入して起こるものがあります。
時間が経てば海水は蒸発したり海に戻ることで水分もなくなりますが、海水に含まれていた塩分の一部が土地に残ってしまい、塩害となります。
塩害は自然災害でも起こります。日本では、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災の津波により、海水で冠水した農地が塩害被害が出たことは記憶に新しいことだと思います。
人為的要因による塩害
自然現象や自然災害による塩害に対して、人為的な要因の身近なところとして、農業により土壌の塩分濃度が高くなってしまう塩害もあります。
主に、同じ農地で同じ農作物を栽培する時に使用した肥料の中で農作物が吸収しなかった成分が化学反応を起こして塩分濃度が高くなることがあります。いわゆる連作障害です。
肥料に塩分が含まれていなくても土の中にある金属イオンと結合することによって塩化ナトリウムが生成され、それが一定濃度を超えると塩害を引き起こします。
また、近年では道路の凍結防止剤が塩害の原因にも挙げられたりします。
塩害が人々の生活に及ぼす影響
塩害は、私たちの生活のどういうところに影響を与えているかご存知でしょうか?
農作物に与える影響
土壌中の塩濃度が高くなることで農作物が順調に育たなくなることが考えられます。私たちの生活へのとしては野菜の高騰につながります。
日照不足や大雨などによって野菜が高騰しているニュースを毎年のように見ていますが、塩害による農作物被害ってなかなか目にすることはありません。
天候などはインパクトがある影響と思っています。温暖化からの異常気象というイメージがあるためです。話題性があります。
一方、塩害はじわーりじわーり長期にわたって起こっている被害ですので、話題性に欠けます。
テレビは視聴率を狙って番組が作られています。天候は多くの方が影響しますが、塩害はごく一部の方だけ。番組を作る場合、どちらに偏るか想像できますよね。
私たちが目にすることが無いだけで、塩害の被害は確実に起こっています。
建築物等に与える影響
ここでは、土地に対する塩害問題がテーマですが、土地から建築物にも影響を与えることがあるため簡単にご紹介します。
建築物への影響は、鉄筋コンクリートで起こっています。
塩化物イオンがコンクリートに侵入し鉄筋を腐食させ、腐食した鉄筋は膨張するのでコンクリートが割れてしまう、という被害です。
古い鉄筋コンクリートでは、塩分を含んだ海砂や砂利を用いてコンクリートが作られたことがあり、建築物の倒壊の原因になっている事例があります。
なぜ「塩」で問題が起こるか?
そもそもなんで塩で問題が起こるのか?
浸透圧により植物の成長を阻害
海水などに含まれる、塩化ナトリウム(NaCl)いわゆる「塩」が多量に存在することにより浸透圧が高くなり、植物の根の吸水作用を阻害することで植物が育たなくなります。
料理のときに、塩もみすると水分がでてくると思いますが、あれと同じ作用が起こっています。
ナトリウムイオンによる生理障害による枯れ
塩が水に溶けるとナトリウムイオンになり、ナトリウムイオンが高濃度になると植物の細胞のイオン濃度も上昇し、様々な酵素反応が阻害されます。
土壌構造破壊による土の劣化
土壌中のナトリウムイオン濃度が高くなると、土壌粘土鉱物は分散しやすくなり、団粒構造が破壊されます。団粒構造は有機物など植物に必要な栄養や微生物が固まりになっている土で、ミミズの排泄物が良い例で、植物の育成には欠かせないものです。
除塩で塩害から土地を復旧する必要がある
塩害被害にあった土地は、除塩によって復旧することができます。
一言で言うと、真水で土壌を洗い流すというイメージになります。実際にはそれだけだと効率が悪いため、実際の除塩は化学的な方法を合わせて行われます。
塩分は塩素とナトリウムが化合して、塩化ナトリウム(塩:しお)となることで発生します。
除塩に効果的とされる物質としてよく用いられているのが石灰です。
石灰は、土壌の中にあるナトリウムに代わって石灰中のカルシウムが結合することによって「ナトリウムとナトリウムが置換」という化学反応が起きます。